遺言書を書くことは縁起の悪いことではありません

遺言とは

遺言とは、遺言者の最終の意思表示に対して、その遺言者の死亡を要件として法律効果を発生させる制度のことです。これを言い換えると、自分の死んだ後の法律関係(財産や身分関係など)について、法律に定められた方式に従って定めておく最終の意思表示ということができます。

なぜ遺言をした方がよいのか -遺言書の作成を特にお勧めするケース-

遺言は亡くなった後のことを書くものだからといって、縁起の悪いものではありません。例えば、生命保険は自分が亡くなった後の家族のことを考えて加入するものですが、遺言も同じように、一種の保険のようなものだと思っていただいてもよいかもしれません。また、お金持ちの人や高齢者、死に直面した人に限ってするものでもありません。

遺言は、遺された家族が無用な争いに巻き込まれないように、また、家族どうしが争わないように、生前に準備しておくべき重要な法律行為であり、あなたの家族に対する思いやりや優しさの表れとなるものです。

中でも積極的に遺言書を作成すべきケースとしては、以下のケースが挙げられます。どれかに当てはまることが多いかと思います。

1. 法定相続分と異なる配分をしたい
2. 相続人の人数や財産の種類、数量が多い
3. 財産は今居住している家と土地しかない
4. 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる
5. 農家や個人事業主、小規模企業経営者である
6. 相続人以外に財産を与えたい
7. 複雑な事情がある

1. 法定相続分と異なる配分をしたい

遺言者(遺言をした人)の意思による、相続人個々の生活状況などを考慮した配分が可能となります。

遺言書によらなければ相続分を指定することはできません。遺産分割方法の指定をすることもできません。民法には法定相続分の規定がありますが。遺言により相続分や遺産分割方法が指定されていれば、それが優先されます。

(例)三女は結婚せずに、親の面倒をみてくれたから、他の2人の子よりも多めに相続させたい。

(例)長男は十分やっていけるから、次男に多めに相続させたい。

2. 相続人の人数や財産の種類、数量が多い

誰が何を取得するかについて明確に指定すれば、後々の紛争防止につながります。

(例)長男には不動産を、次男には預貯金を、三男には株券を相続させたい。

3. 財産は今居住している家と土地しかない

多くの財産を持っている人ばかりではなく、財産が少ない場合も争いになることがあります。

今住んでいる家と土地を分筆や換価せずに、そのまま住み続けることになっている特定の相続人に相続させた場合、それ以外の相続人は相続分がないと不満を言う可能性があります。

(例)長男には今住んでいる土地と家を相続させ、そのまま住み続けてもらいたい。そして、次男や長女には今までかなりの援助をしてやったので、遺産分けができないことを快く了承してもらいたい。

(例)今住んでいる土地と家は換価せずに、妻がずっと住み続けられるように妻だけにを相続させ、子供たちには自分からの遺産分けがないことを快く了承してもらいたい。

4. 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる

遺言者に子供がおらず両親が先に他界している場合で兄弟姉妹がいる場合は、配偶者とその義理の兄弟姉妹(遺言者の兄弟姉妹)が相続人となります。配偶者とその義理の兄弟姉妹との協議は、なかなか円満に進まないものです。

状況や関係如何によっては、遺された配偶者が不利となる遺産分割を余儀なくされることもありますので、そういったことを防ぐ意味でも、このケースでは是非とも遺言書を作成されることお勧めいたします。

5. 農家や個人事業主、小規模企業経営者である

相続による事業用資産や株式、債務(注:債権者の承諾が必要)の分散を防ぎ、後継者となる相続人に承継させることができます。

(例)事業に関するすべての財産を事業継承者である長男に相続させたい。

6. 相続人以外に財産を与えたい

遺言書による相続分の指定や遺産分割方法の指定は、当然のことながら遺言者の相続人に対してのみにしかすることができません。

相続人以外の人(かわいい孫、内縁の妻、生前に特にお世話になった人、長男の妻など)には、遺言によって遺産の一部又は全部を与えることができ、これを遺贈といいます。

この遺贈は、遺言書によらなければすることができません。

(例)長男が先に他界したにもかかわらず、私を看病してくれたので、預貯金のすべてを長男の妻に遺贈したい。

(例)内縁の妻がいるが、自分が亡くなった後も、今居住している土地・建物は相続人間で遺産分割させずに、遺贈することにってその内縁の妻に住まわせてやりたい。

7. 複雑な事情がある

  • 相続人が1人もおらず、今まで収集した高価なコレクションが、このままでは国庫帰属になってしまうので、自分の希望する美術館を運営する法人に寄付(遺贈)したい。
  • 財産は妻1人が居住している土地と家屋のみであり、換価分割をしたりや共有状態にはしたくない。
  • 配偶者は既に他界し、子供たちだけが相続人となるが、兄弟仲が悪く、遺産分割のことで揉めることが目に見えている。
  • 先妻と後妻のそれぞれに子供がおり、相続分に差を付けたい。
  • 現在の妻と先妻の子供が相続人であり、相続に関して紛争が予想される。
  • 妻以外の女性との間に認知した婚姻外の子供(非嫡出子)がおり、妻との間の子(嫡出子)と相続分を同じ(平等)にしたい。
  • 相続人の中に行方不明者や精神上の障がいをもつ者がおり、家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任の申立て(更には不在者の財産管理人が遺産分割協議に参加するための家庭裁判所の許可が必要)や後見開始の審判の申立てをしなければ遺産分割協議ができないという場合
  • 相続人の中に浪費者や多額の債務を追っている者がおり、折角の遺産が無駄に費消されたり、債務に充てられるしまうので相続させたくない。
  • 外に妻以外の子供がいるが、生前は妻の手前認知ができない。
  • 遺言者に未成年の子供がおり、配偶者(子供の親権者)と間で遺産分割協議をすることは利益相反行使に当たるため、各子供ごとの特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない場合 など