ここに掲載している行為以外は遺言書に記載したとしても法的効果は生じません。
遺言でのみできる行為は遺言書に記載すべきですし、生前行為として実現できる行為であっても認知などは実際にはなかなかできないことですので、遺言によって実現させるのも一つの考え方かもしれません。
遺言によらなければできないこと
以下は、生前行為ではできず、遺言書に記載することによってのみ実現できる行為です。
- 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない(民法第839条第1項)。
- 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる(民法第849条)。
- 共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる(民法第902条)。
- 遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる(民法第908条)。
- 共同相続人間の担保責任の別段の意思の表示(民法第914条)。
- 包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分【遺贈】することができる(民法第964条)。
- 1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる(民法第1006条第1項)。
- 遺留分侵害額の負担に関する別段の意思の表示(民法第1417条第1項第3号ただし書)。
生前行為でも遺言でもできること
以下は、生前行為ですることがきますが、遺言によってもすることができる行為です。
- 認知(民法第781条第1項・2項)。
- 推定相続人の廃除(民法第892条・893条)
- 推定相続人の廃除の取り消し(民法第894条第1項・2項)
- 信託(信託法第3条第2号)
- 一般財団法人設立(※)
- 生命保険金の受取人の変更(保険法第44条第1項)
- 系譜、祭具及び墳墓の所有権の承継者の指定(民法第897条)
- 特別受益の持戻しの免除(民法第903条第3項)
※ 遺言による一般財団法人の設立について
(法務省ホームページ「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」より)
Q 遺言により一般財団法人を設立することはできますか。
A 遺言によっても、一般財団法人を設立することが可能です。その場合、遺言で一般財団法人を設立する意思を表示し、定款に記載すべき内容を遺言で定め、遺言執行者が遺言の内容の実現(遺言の執行)を行います。遺言執行者は、遺言に基づいて遅滞なく定款を作成して公証人の認証を受け、財団法人成立までに必要な事務を行い、代表理事が、財団法人の設立登記の申請を行います。その際の手続の流れの概略は,次の1.から6.までのとおりです。
- 設立者が遺言で一般財団法人を設立する意思を表示し、定款に記載すべき内容を遺言で定める。
- 遺言執行者が遺言の内容の実現(遺言の執行)を行い、遺言に基づいて遅滞なく定款を作成して公証人の認証を受ける。
- 遺言執行者が財産(価額300万円以上)の拠出の履行を行う。
- 定款で設立時評議員、設立時理事、設立時監事(設立時会計監査人を置く場合は、この者も含みます。)を定めなかったときは、定款の定めに従い、これらの者の選任を行う。
- 設立時理事及び設立時監事が設立手続の調査を行う。
- 設立時理事が法人を代表すべき者(設立時代表理事)を選定し、設立時代表理事が法定の期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立の登記の申請を行う。