- 相続発生(建物の所有者が死亡)
- 建物は取り壊し予定
- 相続人は3人
このケースでは、相続登記をしなければならないようにも思えますが、実際に取り壊した後に相続人3人のうちの1人からの申請により、建物の滅失登記をすることができます(不動産登記法第30条)。※建物の滅失登記は表示の登記ですので、依頼する場合は司法書士ではなく土地家屋調査士です。
ただし、上記の「1人からの申請」というのは、取り壊し後の登記手続のことであって、取り壊し自体(業者への発注を含む。)をこの1人の判断でできるかというと、それは別問題です。
民法(抜粋)
(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
相続が発生したことにより、遺産分割をするまでの間は、当該建物はこの3人の遺産共有の状態にあります(民法第898条)。そして、この共有建物の取り壊しは、「共有物の変更」行為に該当するため、3人のうちの1人又は2人の判断では行うことができず、全員の同意により行う必要があります(民法第251条)。※民法第898条は遺産共有、第251条は物権共有の規定ですが、その性質は同じです(最判昭和30年5月31日)。
勝手に取り壊したことによって後で揉めるなどしないように、事前に他の相続人の同意を得る必要があります。
また、相続人全員である3人で遺産分割協議を行い、例えばAが当該建物を単独で取得した場合には、自己の所有になりますので、Aのみの判断で取り壊すことができます。
なお、滅失登記の際に、上記の同意書や遺産分割協議書を添付する必要はありません。