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従業員の給与の差押えと供託

供託とは

供託とは、金銭や物品等を供託所(法務局)に寄託して、受けとる権利のある者に受けとらせることによって法律上の目的を達成しようとする制度です。 弁済供託、担保供託、執行供託、保管供託、没収供託などがあります。

給与と執行供託

従業員の給与債権が差し押さえられると、給与債権について債務者の立場にある雇用主(法律上は「第三債務者」といいます。)に裁判所からの債権差押命令が送達されます。この場合に雇用主が行う供託を執行供託といいます。

執行供託がされると、裁判所による配当手続が開始され、従業員の債権者に対する配当額の支払は、裁判所からの支払委託に基づいて供託所(法務局)が行うことになります。

供託する金額

従業員が給与の支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(当該給付の額が44万円を超えるときは33万円、債権者が扶養義務等に係る定期金債権を請求するときは2分の1に相当する部分)については差押えが禁止されていますので、裁判所の債権差押命令はこれを除いた額(以下「差押可能金額」といいます。)の範囲内で行われることになります。なお、この差押可能金額に相当する金額については、従業員に弁済(給与の支払)をすることが禁止されます。

  1. 差押可能金額の一部に対し差押えがされた場合には、雇用主は、差し押さえられた金額に相当する額を供託することができるほか、差押えに係る給与債権の手取額の全額を供託することもできます(権利供託)。
  2. 差押可能金額の全額に対し差押えがされた場合には、雇用主は、差押えに係る給与債権の差押可能金額の全額を供託することができるほか、差押えに係る給与債権の手取額の全額を供託することもできます(権利供託)。
  3. 2つ以上の債権差押命令の送達を受けて差押えが競合した場合(例)
    従業員が雇用主に対して有する給与債権の手取額40万円のうちの差押可能額10万円について、従業員の債権者であるXから、まず6万円の差押えを受けると残りは4万円となりますが、この4万円を超えて新たな差押え(債権差押命令のほかに債権差押処分、債権仮差押命令も含む。)がされることを「差押えの競合」といいます。例えば、Xからの差押え後、更に当該従業員の別の債権者であるYから5万円の差押えがされた場合、Xの6万円の差押えの効力も、Yの5万円の差押えの効力もいずれも従業員の給与債権の手取額のうちの差押可能金額10万円全てに及ぶものとされています。
  4. このように差押えが競合した場合には、雇用主は、必ず差押可能金額の全額に相当する金額を供託しなければなりません(義務供託)。
  5. ここでいう「手取額」又は「支払期に受けるべき給付」とは、給与所得(基本給+諸手当(通勤手当を除く。))から所得税、住民税及び社会保険料等法律上当然に控除すべきもの(法定控除額)を控除した実質賃金である手取額をいいます。給与から天引きされている住宅ローン、団体生命保険料等の私的な契約に基づくものは、原則として法定控除額には含まれず、これを差し引いた額を供託することはできません。

供託手続

供託をする場合には、供託書に必要事項を記載し、これに供託物を添えて、債務の履行地の供託所(給与債権の場合は労働契約における特約等がない限り勤務地(勤務地に供託所がない場合は勤務地の都道府県内に所在する最寄りの供託所)において供託手続を行う必要があります。

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