質問
夫が突然亡くなりました。相続人は私と長女Aと長男Bです。公正証書遺言があり、「甲不動産を長女Aが2分の1、長男Bが2分の1の持分割合で相続させる。」と書いてありました。しかし、Bは遠方で事業をしており故郷に戻る予定はなく、甲不動産の共有者にはなりたくない、持分は要らないと言っています。また、Aは甲不動産を単独で取得したいと言っています。甲不動産についてAとBとの間で遺産分割協議を行い、Aが単独で取得する旨の協議書も添付して相続登記を申請することはできるのでしょうか?
回答
遺言書の「甲不動産を長女A、長男Bにそれぞれ2分の1の割合で相続させる。」という記載は、特定財産承継遺言(遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言)といって遺言による遺産分割方法の指定であり、相続の発生により即時にA及びBにそれぞれ2分の1の割合で所有権移転の効力が生じている(甲不動産については遺産分割は終わっている)ことになります(最判平成3年4月19日)。したがって、遺言書とともに当該不動産をAが単独で取得する旨の遺産分割協議書を添付して、Aへの相続登記を申請することはできません。
根拠実例(登記研究546号152頁)
特定の不動産を「長男A及び二男Bに各2分の1の持分により相続させる。」旨の遺言書とともに、A持分3分の1、B持分3分の2とするA及びB作成に係る遺産分割協議書を添付して、A持分3分の1、B持分3分の2とする相続登記の申請はすることができない。
解決策
本件において、Bが甲不動産を単独で取得したい場合は、遺言どおりにA及びBへの相続登記を行い、AB間で不動産の共有持分の贈与等の契約を締結し、当該贈与等を原因とする共有者Aから共有者Bへの持分全部移転登記を申請する必要があります。
補足
遺言で相続分の指定がなされていたり、複数人に対して包括遺贈されている場合は、遺産分割を行い、その内容で相続登記をすることができます。遺産共有の状態にしておくよりも、むしろ遺産分割をした方が良いケースです。
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