法務局に相続登記の申請をするために戸籍を集めていて、市町村役場に同じ相続人である兄弟姉妹の現在戸籍抄本を請求しようとした際に、担当者から、「戸籍は本人若しくは配偶者又は本人の直系卑属・直系卑属しか取得できないので、その兄弟姉妹からの委任状を持ってきてください。」と言われたと聞いたことがあります。
この担当者の対応は適切ではありません。正当な理由があれば、委任状がなくても取得することは可能です。
ただし、次のB~Dの場合において、他人の戸籍の証明書を取得するには、自分の権利を行使したり、自分の義務を履行したりするために戸籍の証明書が必要な場合や、国、都道府県、市区町村での手続に戸籍の証明書が必要な場合など、正当な理由がある場合に限られます。
この場合には、委任状は必要はないものの、正当な理由があることを請求書に詳しく記載する必要があります。また、追加の資料の提出を求められることがあります。
戸籍請求できる人
A 戸籍に記載されている本人等
- 戸籍に記載されている本人
- 上記本人の配偶者(夫又は妻)
- 上記本人の直系尊属(父母、祖父母等)
- 上記本人の直系卑属(子、孫等)
B 自己の権利の行使又は義務の履行のために必要な人
- 亡くなった兄弟姉妹の相続人となった人が、兄弟姉妹の戸籍謄本を請求する場合
- 債権者が、貸金債権を行使するに当たり、死亡した債務者の相続人を特定するために当該債務者が記載されている戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
- 生命保険会社が、保険金を支払うに当たり、その受取人とされている法定相続人を特定するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
【交付請求書に明らかとすべき事項】
(1)権利又は義務が発生する原因となった具体的な事実
(2)権利又は義務の内容の概要
(3)権利行使又は義務履行と戸籍の記載事項の利用との具体的な関係
C 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある人
- 乙の兄の甲が、被相続人よりも先に死亡しているため、甲の出生から死亡までの戸籍、代襲相続人である甲の子の現在戸籍を取得し、相続登記の申請の添付書類として戸籍謄本を法務局に提出する場合
- 乙の兄の甲が、死亡した乙の財産を相続によって取得し、その相続税の確定申告書の添付書類とされる乙が記載されている戸籍謄本を税務署に提出する場合
乙の兄の甲が、死亡した乙の遺産についての遺産分割調停の申立てを家庭裁判所にする際の添付資料として、乙が記載されている戸籍謄本を家庭裁判所に提出する必要がある場合 - 債権者甲が、貸金請求訴訟を提起するため、被告となる死亡した債務者乙の相続人を特定するために乙が記載されている戸籍謄本を裁判所に提出する必要がある場合
【交付請求書に明らかとすべき事項】
(1)提出先となる国又は地方公共団体の機関の名称
(2)(1)で記載した機関への戸籍謄本等の提出を必要とする具体的な理由
D その他戸籍に記載された事項を利用する正当な理由がある人
- 成年後見人であった者が、死亡した成年被後見人の遺品を相続人である遺族に渡すため、成年被後見人の戸籍謄本を請求する場合
- 乙の兄の甲が、乙に財産を相続させる旨の公正証書遺言を作成するため、乙の戸籍謄本を公証役場に提出する必要がある場合
【交付請求書に明らかとすべき事項】
(1)戸籍の記載事項を利用する具体的な目的
(2)戸籍の記載事項を利用する具体的な方法
(3)戸籍の記載事項を利用する必要があることの具体的な事由
請求窓口
上記 A
広域交付の場合・・・最寄りの市区町村
広域交付以外の場合・・・本籍のある市区町村
上記 B~D
本籍のある市区町村
注意点
請求の際には、運転免許証等の本人確認書類が必要です。
代理人による場合は、請求者の委任状が必要です。
また、上記Aについて、配偶者又は直系親族からの請求の際、請求された戸籍に請求者の名が載っていない場合で、市区町村において親族関係が確認できないときは、請求者が戸籍に記載されている「本人」の配偶者又は直系親族であることを確認できる資料(戸籍謄本等)が必要になります。