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複数の相続人が別々の不動産を取得する場合は1回の協議で遺産分割しましょう

夢に出てきた架空の話です。

よくよくタイトルを見ると当たり前の話ですよね。不動産に限らず普通は1回です。

被相続人A(配偶者Bは先死亡)、A(母)とB(父)との間の子はC(長女)とD(二女)とE(長男)。被相続人A名義だった不動産は甲、乙、丙の3個。

  1. Cが甲不動産の相続登記を司法書士司法花子に依頼。Cが取得する甲不動産のみが特定された遺産分割協議書が作成されていた模様。甲不動産のCへの相続登記が完了。
  2. 数年後、Dが「母(A)名義の不動産を全部自分の名義にしたい。」と司法書士法務太郎に相続登記を依頼。業務受託時には「本当に全部ですね?」と何度も確認した。
  3. 司法書士法務太郎は、登記漏れがないよう市役所の税務課等で不動産調査を行い、「Aの遺産に属する不動産の全部はDが取得する。」(「全部」とした理由は遺産分割漏れがないように。その実質は、相続登記対象の乙不動産及び丙不動産の外に、増築等を含む未登記不動産、取り壊し予定の小屋。遺産分割後判明した不動産も含まれている。)との文面の遺産分割協議証明書を作成。Dに、C、D及びEの実印及び印鑑証明書の手配をお願いした。
  4. Cから司法書士法務太郎に「この文章だと私が既に相続している不動産が妹に取られるじゃない。だからハンコは押さない。」との連絡が直接入り、司法書士法務太郎は怒られた。※弁護士法に抵触しないようにするために、司法書士から依頼者以外の相続人に連絡を取る(交渉をする)ことは、原則としてありません。
  5. 司法書士法務太郎は、Dからは依頼時に必ず行うヒアリングでも「不動産について、姉は父(B)から相続しているが、母(A)からは相続していない。」と聞いており、また、何もヒントがない状況で被相続人AからCへの相続登記済の不動産を探す術は一切ない。
  6. 最終の見積書を出した後のことなので、司法書士法務太郎には否がないにもかかわらず、乙不動産と丙不動産に特定して作成し直した遺産分割協議証明書の分の金額を加算をすることはできなかった。
  7. また、過去にCが被相続人Aの相続登記をしたことがあったのなら、書類は全て調っているはずであり、Dは改めて費用を出して戸籍等の相続関係書類を取得する必要はなかった。

遺産分割を行い相続登記まで行っている特定の不動産は、名実ともにその名義人の固有の財産になっており被相続人の遺産ではありません。新たな遺産分割にも遡及効がありますが、それを覆すことまではきないはずです。すなわち、先に相続登記をした甲不動産以外の不動産が、後の遺産分割協議時点における「不動産の全部」なのです。

甲不動産についてCが先に遺産分割で取得(遺産分割の効力は相続開始時に遡及。民法第909条)していて、後からの遺産分割でDも取得(遺産分割の効力は相続開始時に遡及。民法第909条)した場合は対抗問題(民法第177条、同第899条の2)になると考えたとしても、先に登記を備えたCの勝ちとなります(二重譲渡の場合と同じ。)。C・D間で当該相続について争いがあるわけではないので実害は全くないと思うのですが、それらを説明しても司法書士の言い訳としか思われないし、Dは感情的に面白くないはずなので、「申し訳ありませんでした。」と言うしかありませんでした。

「私が取得する不動産はその分だけの遺産分割協議書を作って先にこっちてやっておくから、あなたが取得する分はあなたの方で自分でやっておいてよね」はダメよ、という話。最初から各不動産の取得者が決まっているのなら、1つの遺産分割協議書で全部の不動産を分割するべきです。

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