考察・・・
- 配偶者、子、直系尊属のいない遺言者A、遺言にて「甲土地を弟Bに相続させる。Bが遺言者より先に死亡した場合は、Bの法定相続人に法定相続分で遺贈又は代襲相続させる。」
- Bには配偶者C、子D・Eがいるが、遺言者AよりもBが先に死亡した。
- 次いで、遺言者Aが死亡。遺言の効力発生。
- Bの配偶者Cは遺言者Aの相続人ではないので「遺贈」。遺言者Aの甥・姪であるD、Eは特定財産承継遺言による「相続登記」。
- 1個の不動産の所有権の分数的一部に相続が発生するということはありえないので、連件にて、1件目でCに対する遺贈による所有権一部移転登記(持分4分の2)、2件目でD・Eに対するA持分全部移転の相続登記(持分4分の1ずつ)を申請。
- 遺言者Aの相続人ではない共有者を含み、かつ特定財産承継遺言により相続と同時に遺産分割が完了しているので、甲土地は遺産共有ではなく物権共有状態。遺産分割による更正登記(登録免許税・1筆1,000円)を使って共有状態の解消はできず、共有物分割、持分放棄、贈与等による共有者全員持分全部移転等で、3名のうち1人の所有権とする必要がある。
- 遺言執行者の任務は上記5.のみ。上記6.には及ばない。
上記の1.から2.までの事例において、Aの相続人であるBの次にBの配偶者であるCが死亡し、さらに遺言者Aが死亡した場合。
- Bが死亡した時点で予備的遺言の状態が発生し、Bの配偶者Cは、Aの相続人ではないため遺贈(持分4分の2)の受遺予定者となる。
- 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない(民法第994条第2項、受遺者の死亡による遺贈の失効)ため、Cへの遺贈は失効する。
- 失効した遺贈の持分4分の2をCの相続人D・Eが相続することはない。
- 遺贈が失効した甲土地の持分4分の2については、遺言者Aの相続人全員(Aには亡Bの他に兄弟姉妹3人がいる。そして代襲相続人D・E。)が法定相続分で取得することになる。
- この遺言書を使って、1件の相続登記において、失効した予備的遺言の持分4分の2を遺言者の兄弟姉妹3人+代襲相続人D・Eの計5人、失効していない予備的遺言のD・E持分各4分の1ずつをさらに相続して共有とすることができるのだろうか?
- いずれにしても、遺贈が失効した時点で遺言執行者の遺贈の任務は消滅し、相続による所有権一部移転登記も申請できないので、甲土地自体について遺言執行は不能となる。でよい?(遺言者の遺志実現という道義的な問題は置いておいたとして。)もちろん、相続人から依頼があれば、司法書士として甲土地の遺産分割や相続登記申請には別業務として協力はしたい。