不動産の所有権を放棄したり、市に寄付したりすることはできないのですか?

Q

実家の父は、居住している建物とその敷地の土地、そして山林を数筆所有しています。父が亡くなった時の推定相続人は私だけで、私は現在関東に住んでおり、将来もその実家に戻るつもりはありません。父の名義の不動産を相続した際にその不動産の所有権自体を放棄したり、市に寄付したりすることはできないのでしょうか?

A

現在の法律には不動産の「所有権」を放棄することができる規定はありません。また、地方公共団体への寄付に関しても、それぞれの公有財産規則によって要件や手続が定められており、地方公共団体によって異なると考えられますが、簡単に受け入れてもらえるものではありません。

なお、国への寄付についてですが、寄付の申出があったときは、国有財産法第14条及び同法施行令第9条の規定により、各省各庁が国の行政目的に供するために取得しようとする場合に、財務大臣と協議の上、取得手続をすることになっています。行政目的で使用する予定のない土地等の寄付については、維持・管理コスト(国民負担)が増大する可能性等が考えられるため、受け入れてもらうことはできません。

解決策

預貯金がなかったり、借金の方が多いなどの場合は、家庭裁判所の手続において相続放棄をすることが考えられますが、その場合でも第二順位者が相続することになりますし、第二順位者以降の親族がいなくても当該遺産の管理の問題が残るので、慎重に検討する必要があります。

補足

令和3年4月21日に相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)が成立し、令和3年4月28日に公布されました。

この相続土地国庫帰属法により、相続又は遺贈により「土地」の所有権又は共有持分を取得した相続人は、当該土地の所有権又は共有持分を手放すことができるようになります。

手続の流れ・・・①承認申請・申請手数料納付→②法務大臣(法務局)要件審査・承認→③申請者が負担金(土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額)を納付→④国庫帰属

却下要件(その事由があれば直ちに通常の管理・処分をするに当たり過分の費用・労力を要すると扱われるもの)
承認申請は、その土地が次のいずれかに該当するものであるときは、することができない。

  1. 建物の存する土地
  2. 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

不承認要件(費用・労力の過分性について個別の判断を要するもの)
法務大臣は、承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

  1. 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  2. 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  3. 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
  5. 上記のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

相続土地国庫帰属法の施行期日は、公布後2年以内の政令で定める日とされています。