遺贈の登記は相続登記のように単独申請できますか?

質問

亡くなった祖父の遺言により祖父名義の不動産の遺贈を受けることになりました。相続だと遺言書を添付して自分だけで相続登記の申請ができると聞いたのですが、遺贈も同じように私単独で申請することはできるのでしょうか? ちなみに遺言書には「A不動産を〇〇に遺贈する。」と書いていました。なお、祖父は私の父の父です。

回答

お父様がお祖父様(遺言者)よりも前に亡くなっていない限り、ご質問者様(受遺者)は、お爺様の相続人ではありません。

受遺者が相続人でない場合は、受遺者が単独で遺贈を原因とする所有権移転登記の申請をすることはできません。

解決策

判決により受遺者が単独で申請する場合を除き、受遺者と遺言者の相続人全員の共同申請により行います。遺言執行者が指定されている場合には、受遺者と遺言執行者の共同申請により行います。

本事例のケースは特定遺贈ですが、包括遺贈の場合も同様です。

根拠先例(昭和33年4月28日民甲第779号通達)

包括遺贈による所有権移転の登記は、登記権利者として受遺者、登記義務者として遺言執行者又は相続人との共同申請によるべきである。

遺贈を原因とする所有権移転登記における遺言執行者がいる場合といない場合の違い
※ 以下の説明は、相続人以外への遺贈の登記に関するものです。 遺贈を原因とする所有権移転登記は、遺言執行者がいる場合といない場合とで以下の違い(朱書き)があります。 遺言執行者がいないと登記手続に遺言者の相続人全員の関与が必要となり、場合に...

相続人に対する遺贈の場合

令和3年4月28日に公布された改正不動産登記法(当該改正部分についての施行期日は令和5年4月1日)においては、この遺贈による所有権移転登記は、相続人に対する遺贈に限り、受遺者が単独で申請することができるようになりました。↓こちらをご参照ください。

民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)(通達)
以下は、令和5年3月30日付け法務省民二第538号民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)」の主要部分の抜粋・要約です。 相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続の...

遺贈を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、包括遺贈・特定遺贈を問わず課税価格の1,000分の20ですが、受遺者が相続人であることを証する書面が添付されている場合は、相続登記と同様の1,000分の4になります(平成15年4月1日民二第1022号通達)。

本事例においては、お祖父様(遺言者)が亡くなるもりも前にお父様が亡くなっていた場合は、ご質問者様(受遺者)はお父様の代襲者であるため、相続人であることを証する戸籍を添付することにより単独申請をすることができ、登録免許税が課税価格の1,000分の4になります。

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