換価分割の場合の代表相続人への相続登記

相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法第907条第1項、遺産分割協議)。また、遺産の分割について、相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます(民法第907条第2項)。

この遺産分割には、「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つの方法があります。

  1. 「現物分割」とは、例えば「甲不動産は相続人Aが、乙動産は相続人Bが、丙銀行の預金債権は相続人Cがそれぞれ取得する。」などのように、原則として、被相続人の特定の遺産を特定の相続人がそのまま(共有も可)承継することをいいます。土地であれば、分筆して分け合うことも可能です。
  2. 換価分割」とは、遺産の全部又は一部を売却して換価した上で、その売却代金を相続人間で分け合う方法です(家事事件手続法第194条第1項参考)。
  3. 「代償分割」とは、相続人の1人又は数人が遺産を取得する際に、他の相続人に対し、債務を負担(代償を給付することを約束する。)する遺産分割の方法です(家事事件手続法第195条参考)。

不動産について、上記2.の「換価分割」を行う場合には、売却(売買を原因とする所有権移転登記)を行う前提として相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)をする必要があります。

手続の流れとしては以下のとおりです。

  1. 対象の不動産についての相続登記
  2. 対象の不動産の売却・換価
  3. 相続人に売却代金を分配

このとき、上記1.の相続登記の登記権利者(登記名義人となる人)を、①法定相続として相続人全員の共有にするか、②代表相続人(複数人でも可)にするか選択することになります。メリット・デメリットはそれぞれにありますが、売却をスムーズに行うことを重視する場合は、代表相続人1人の名義にした方が良いと考えられます(税務面で比較検討・判断をする場合は、必ず税理士に相談してください。)。法定相続で相続登記をすると、売却時に相続人全員が手続に関与する必要があるからです。

ここで、上記②を選択し、代表相続人1人から相続人に金銭を分配した場合、その行為が贈与に該当し、贈与税の問題になるのではないか、という疑問が生まれます。しかし、これについては、国税庁から次の質疑応答が示されており、贈与税は課税されないこととされています。

国税庁質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

照会要旨:
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。
この場合、贈与税の課税が問題になりますか。

回答要旨:
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。

これは、家庭裁判所による遺産分割調停に関するものですが、遺産分割協議にも妥当するものと考えられます。

なお、売却は不動産の譲渡ですので、譲渡所得税に留意する必要あります。

No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等|国税庁

1-②

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