民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)(通達)

以下は、令和5年3月30日付け法務省民二第538号民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)」の主要部分の抜粋・要約です。

相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

遺贈は、遺言者が推定相続人ではない人に財産を遺すものというイメージがあります。実務上も、推定相続人に対しては、ほとんどのケースが特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる」遺言)となっているようにも思います。ですが、遺言者が孫に遺贈する旨の遺言をした場合において、子(孫の親)が遺言者よりも先に死亡した場合は、孫が代襲相続人となり、結果的に相続人に遺贈した形になります。

改正不動産登記法(抜粋)

(判決による登記等)
第六十三条 1項及び2項省略
3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

不動産登記令(以下「不登令」という。)の一部が改正され、改正不動産登記法(以下「改正不登法」という。)第63条第3項の規定により登記権利者が単独で遺贈による所有権の移転の登記を申請するときは、登記原因証明情報として次の情報を提供しなければならないこととされた(不動産登記令等の一部を改正する政令(令和4年政令第315号 )による改正後の不登令(以下「改正不登令」という。 )別表の30の項添付情報欄ロ)。

  1. 相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
  2. 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)によって所有権を取得したことを証する情報
上記2.は、遺言書です。

登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

買戻しの特約に関する登記の抹消

改正不動産登記法(抜粋)

(買戻しの特約に関する登記の抹消)
第六十九条の二 買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

  • この「契約の日から10年」は、契約上の期間満了を意味するものではありません。したがって、例えば買戻期間を5年とする買戻特約の場合も、不動産の売買契約締結の日から5年ではなく10年を経過しないと単独抹消申請をすることができません。ただし、改正不登法第70条第2項(存続期間の定めが登記される権利に関する登記の簡易な抹消の手続)の適用対象にはなります。 参考:民法第580条第1項 買戻しの期間は、10年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、10年とする。
  • 登記義務者が所在不明であることは、単独抹消申請の要件とされていません。

不登令の一部が改正され、改正不登法第69条の2の規定により登記権利者が単独で買戻しの特約に関する登記の抹消を申請する場合には、登記原因証明情報を提供することを要しないこととされた(改正不登令第7条第3項第1号 )。→添付情報は、委任の場合の代理権限証明情報以外なし(渡辺加筆)

改正不登法第69条2の規定により登記権利者が単独でする買戻しの特約に関する登記の抹消の申請において、申請情報の内容とする登記原因は 「不動産登記法第69条の2の規定による抹消」とするものとし、登記原因の日付を要しない

以下は、申請書の特徴です(注:説明に必要な主な部分のみを記載しています。)。

登記の目的 ●番付記1号買戻権抹消

原因 不動産登記法第69条の2の規定による抹消

登記官は、改正不登法第69条の2の規定による申請に基づく買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合には、当該登記の登記名義人であった者に対し、登記が完了した旨を通知しなければならないこととされた(不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和5年法務省令第6号)による改正後の不動産登記規則(平成17年法務省令第18号。以下「改正不登規則」という 。)第183条第1項第3号)。通知書は、当該登記の登記名義人であった者の登記記録上の住所に宛てて発送するものとする。

改正不登法第69条の2の規定は、当該規定に係る改正法の施行の日(令和5年4月1日以後にされる登記の申請について適用することとされた(改正法附則第5条第1項)。

除権決定による登記の抹消等

(別途記事にする予定です。)

解散した法人の担保権に関する登記の抹消

(別途記事にする予定です。)

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。 )がされている場合において、次に掲げる登記をするときは、所有権の更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとする。

  1.  遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記
  2. 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記
  3. 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記
  4. 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記
  • 所有権の更正の登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
  • 上記3.及び4.の例としては、法定相続分での相続登記後に遺言が発見された場合などです。

所有権の更正の登記の申請において、申請情報の内容とする登記原因及びその日付は、次の振り合いによるものとする。

上記1.の場合・・・年月日(遺産分割の協議若しくは調停の成立した年月日又はその審判の確定した年月日)遺産分割

上記2.の場合・・・年月日(相続の放棄の申述が受理された年月日)相続放棄

上記3.の場合・・・年月日(特定財産承継遺言の効力の生じた年月日)特定財産承継遺言

上記4.の場合・・・年月日(遺贈の効力の生じた年月日)遺贈

以下は、申請書の特徴です(注:説明に必要な主な部分のみを記載しています。)。

登記の目的 ●番所有権更正

原因 (上記1.~4.のとおり。)

所有権の更正の登記の申請をする場合に提供する登記原因証明情報としては、次のようなものが該当する。

上記1.の場合・・・遺産分割協議書(当該遺産分割協議書に押印した申請人以外の相続人の印鑑に関する証明書を含む。)、遺産分割の審判書の謄本(確定証明書付き) 、遺産分割の調停調書の謄本

上記2.の場合・・・相続放棄申述受理証明書及び相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

上記3.の場合・・・遺言書(家庭裁判所による検認が必要なものにあっては、当該検認の手続を経たもの)

上記4.の場合・・・遺言書(家庭裁判所による検認が必要なものにあっては、当該検認の手続を経たもの)

  • 上記2.の相続放棄申述受理証明書は、本籍及び死亡年月日が記載されていれば、相続放棄申述受理通知書でも構いません。
  • 登記識別情報の提供及び戸籍の再提出は不要です。

登記官は3.及び4.の登記(所有権の更正の登記 の申請)の申請(登記権利者が単独で申請するものに限る。 )があった場合には、登記義務者に対し、当該申請があった旨を通知しなければならないこととされた(改正不登規則第183条第4項) 。通知書は、速やかに登記義務者の登記記録上の住所に宛てて発送するものとする。

所有権の更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾がなければ申請することができないことなどは 従前のとおりである(不登法第66条、第68条等)。

胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記手続の見直し

胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記の申請において、申請情報の内容とする申請人たる胎児の表示は 「何某(母の氏名)胎児」とするものとする。

本取扱いは、令和5年4月1日以後にされる登記の申請から実施するものとする。

相続に関する胎児の権利能力
質問 お母さんのおなかの中にいる子は、お母さんの妊娠中に亡くなったお父さんの相続人ですか? 回答 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされる(民法第886条第1項)ので、亡父の相続人です。ただし、死産の場合、その子は相続しなかった...

当事務所の業務

相続登記(相続による不動産の名義変更)
相続登記(不動産の名義変更・家の名義変更・土地の名義変更)は、柳川市の渡辺和也司法書士事務所にお任せください。
遺贈の登記(不動産の名義変更)
相続・遺言をメイン業務としている福岡県柳川市の司法書士事務所です。受遺者や遺言執行者に指定された相続人の方、弁護士や税理士、行政書士の先生から遺贈による所有権移転登記(不動産の名義変更)のご依頼をお待ちしております。

お問い合わせ・ご依頼用のメールフォーム