相続財産清算人(旧相続財産管理人)が遺産分割協議に参加?

家庭裁判所に選任された財産管理人等が遺産分割協議に参加するケースとしては、相続人の中に行方不明者がいる場合に、利害関係人である相続人が家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てを行い、選任された不在者財産管理人が、家庭裁判所から権限外行為許可を得た上で、当該行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加するということがあります。

では、相続財産清算人(旧相続財産管理人)はどうでしょうか?

相続財産清算人は、相続人が不存在の場合に選任されるものなので、遺産分割協議とは一見無関係なようにも思えますが...

また、独身の相続人が亡くなっても、結局父母のどちらかや兄弟姉妹が二次相続するから相続人不存在はあり得ないのでは...

遺産分割協議について

遺産分割協議は、共同相続人(包括受遺者を含む。未成年者の場合は家庭裁判所に選任された特別代理人による。)の全員が参加して行わなければなりません。1人でも参加していなかったり、判断能力が不十分な相続人がいる場合に他の相続人のみで行ったりすると、その遺産分割協議は無効になります。任意代理や代筆等も不可です。判断能力が不十分な相続人については、後見等開始の申立てを行う必要があります。

被相続人甲が死亡し、次いで遺産分割未了の間に相続人乙も死亡し、相続人乙に相続人がいない場合、被相続人甲の他の相続人は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任の申立てを行い、選任された相続財産清算人と遺産分割協議を行う必要があります。相続人乙は、既に亡くなってはいますが、被相続人甲についての相続権を取得した後に亡くなっているので、それを無視して他の相続人のみで遺産分割協議を行うことができないからです。なお、相続財産清算人が遺産分割協議に参加するにあたっては、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

相続財産清算人とは

相続人の存在、不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には、家庭裁判所は、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)の申立てにより、相続財産清算人を選任します(民法第952条第1項)。

相続財産清算人の任務は、以下の2~3の下線部とおりです(民法第952条第2項~第959条)。

  1. 家庭裁判所は、相続財産清算人の選任の審判をしたときは、相続財産清算人の選任及び相続人捜索の公告をします(公告期間6ヶ月以上)。
  2. 上記1.の公告と並行して、相続財産清算人は、相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告をします(公告期間は2ヶ月以上で、上記1の公告期間内に満了するものでなければなりません。)。
  3. 上記1.の公告の期間満了後、3ヶ月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
  4. 相続財産清算人は、必要に応じて、家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株などを売却し、金銭に換えることもできます。
  5. 相続財産清算人は、相続債権者や受遺者への支払いをしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。
  6. 上記5.の支払い等をして、相続財産が残った場合は、相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。

相続財産清算人が遺産分割協議に参加するケースとは(主なもの)

他の相続人の相続放棄により相続人不存在となったケース

  • 被相続人の相続人は、被相続人の配偶者Aと2人の間の子B、同じく子C。
  • Cには配偶者や、直系卑属(子や孫など)、A以外の直系尊属(祖父母など)がおらず、Cは被相続人の死亡後に死亡。
  • AとBは、それぞれCを相続放棄。
  • Cには相続人がいないことになるため、A又はBは、Cについての相続財産清算人の選任の申立てを行い、A、B及び相続財産清算人の3人で遺産分割協議を行った。

元配偶者との間の子が死亡して相続人不存在であったケース

  • 被相続人には元配偶者との間の子Aがおり、Aは被相続人の死亡後に死亡。
  • Aに配偶者や直系卑属(子や孫など)、直系尊属(父母や祖父母など)及び兄弟姉妹はいない(又は全員が相続放棄)。
  • 被相続人と現配偶者Bとの間に直系卑属(子や孫など)はいない。
  • Bは、Aについての相続財産清算人の選任の申立てを行い、相続財産清算人と2人で遺産分割協議を行った。

※このケースで被相続人と現配偶者との間に子がいれば、その子はAの相続人(兄弟姉妹)であるため、Aは相続人不存在とならない。

相続人の配偶者が死亡して相続人不存在であったケース

  • ①被相続人、②子A、③Aの配偶者Bが順次死亡。AとBとの間に直系卑属(子や孫など)はいない。
  • Bに元配偶者等との間の直系卑属(子や孫など)、直系尊属(父母や祖父母など)及び兄弟姉妹はいない(又は全員が相続放棄)。
  • 被相続人の子Cは、Bについての相続財産清算人の選任の申立てを行い、相続財産清算人と2人で遺産分割協議を行った。

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