相続人に対する遺贈の登記(単独申請の場合)は前提としての住所等変更登記が不要?

相続登記を申請する場合は、登記記録上の住所から変更が生じた後、被相続人が住所変更の登記の申請をしないまま亡くなったとしても、相続登記の前提としての住所変更登記を申請する必要はありません(申請することはできません)。では、遺贈の登記の場合はどうなのでしようか?

原則としては、必要です。

根拠先例(昭和43年5月7日民甲第1260号回答)

登記名義人の表示に変更または錯誤がある場合、権利の移転等の登記の申請書に変更または更正を証する書面を添付し、登記義務者の表示を登記簿上の表示及び現在の表示を併記することにより登記名義人の表示の変更または更正の登記を省略することはできない。

根拠実例(登記研究380号81号)

遺贈の登記を申請するに当たって。遺贈者の登記簿上の住所が死亡時の住所と相違している場合には、住所変更の登記をしなければならない。

ですが、

相続人に対する遺贈の登記の場合は法改正によって相続登記と同様に受遺者による単独申請が可能となり、当該単独申請をする場合は、前提となる住所等変更登記の申請は不要(実務上の取扱い?)とされたようです。

法務省民事局作成の令和5年4月版(登記手続ハンドブック)「登記申請手続のご案内(遺贈による所有権移転登記/相続人に対する遺贈編)」の19ページから20ページにかけて、次の記載があります。

ⅲ なお、遺贈者の最後の住所及び氏名が登記記録上の住所及び氏名と異なる場合や、遺贈者の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、遺贈者が登記記録上の所有者であることを証明するため、次のいずれかの書類を添付します。
① 住民票の写し(遺贈者の本籍及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)
② 住民票の除票の写し(遺贈者の本籍及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)
③ 戸籍の附票の写し(戸籍の表示及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)

この書類は死亡した遺贈者と登記名義人が同一人物であることを証明する必要がある旨とともに、住所等変更登記が不要である旨を示した説明であると考えられます。住所等変更登記が不要な相続登記の場合の必要書類と同じ説明になっているからです。また、「遺贈者の最後の住所及び氏名が登記記録上の住所及び氏名と異なる場合」という記載について、先例や実例のとおりに住所等変更登記が必要であるならば、その住所等変更登記を申請することによって「異なる場合」はありえないこととなり、つじつまが合いません。

ちなみに申請書の特徴は、次のとおりです(注:説明に必要な主な部分のみを記載しています。)。

登記の目的  所有権移転

   因  令和年月日遺贈

  者  住所

■■■■■  (申請人)氏名

■■■■■  連絡先の電話番号

 務 者  住所

■■■■■  氏名

※ 義務者欄には、遺贈者の最後の住所及び氏名を記載します。

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