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遺言書を書くことは縁起の悪いことではありません

遺言とは

いわゆる「遺書」とは異なります。

民法に遺言の定義に関する規定はありません。

法律学小辞典(有斐閣)
遺言は、一定の方式に従ってされる相手方のない一方的かつ単独の意思表示であり、遺言者の死後の法律関係を定める最終の意思表示であって、その者の死亡によって法律効果を発生する(民法第960条~第1027条)。遺言の制度を認めることによって、人は遺言により、生前だけでなく、その死後にも自己の財産を自由に処分できることになる(遺言自由の原則)。

日本公証人連合会のホームページ
遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示です(なお、遺言には、非嫡出子を認知するなどの身分上の事項に関する遺言もありますが、このQ&Aでは、財産上の事項に関する遺言について説明することにします。)。

広辞苑
自己の死亡後の財産や身分に関する一定の方式に従った単独の意思表示で、死亡によって効力を生ずるもの。

なぜ遺言をした方がよいのか

遺言は亡くなった後のことを書くものだからといって、縁起の悪いものではありません。

例えば、生命保険は自分が亡くなった後の家族のことを考えて契約することが多いと思いますが、遺言も一種の保険のようなものだと考えていただければよいと思います。また、お金持ちや高齢者、余命宣告された人などに限ってするものでもありません。

以下は、特に遺言書を作成すべき主なケースです。

法定相続分と異なる配分をしたい場合(相続分又は遺産分割方法の指定)

遺言書によらなければ相続分も遺産分割方法の指定もすることはできません。民法には法定相続分の規定がありますが、遺言による相続分の指定や遺産分割方法が指定が優先されます。

財産が居住中の建物とその敷地の土地しかない場合

むしろ財産が少ない方が相続人間の争いになることがあります。また、不動産など換価しなければ容易に分けることができない財産のみの場合も同様です。

現在居住している家と土地しかなく、預貯金があまり多くない場合、その不動産を承継できなかった相続人が不満に思う可能性があります。

配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となる場合

亡くなった人に子供がおらず両親が他界している場合は、配偶者とその亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹との協議はなかなか円満に進まなかったり、そもそも連絡が取りにくかったりするものです。

配偶者が不利となる遺産分割を余儀なくされることもあり得ます。

特定の相続人に事業承継する場合

遺言により、事業用資産や株式の分散を防いで後継者となる相続人にスムーズに事業を承継させることができます。

相続人以外の人に財産を与えたい場合(遺贈)

相続人以外の人(法人も含む。)に、遺言によってを渡すことを遺贈といいます。

この遺贈は、遺言によらなければすることができません(ただし、生前贈与死因贈与による方法もあります。)。

推定相続人がいない人にとっても有効な手段です。

自筆証書遺言と公正証書遺言

民法の規定により、遺言には「普通の方式による遺言」として自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。その他に「特別の方式」として死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印して作成する遺言書のことをいいます。

民法(抜粋)

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

メリット

  1. 誰の関与も必要とせず、いつでも自分が書きたい時に書くこと(書き直し)ができる。
  2. 筆記用具(ボールペンや万年筆など)、紙、認印のみで作成することができる。
  3. 遺言書の内容及び存在を秘密にしておくことができる。

デメリット

  1. 病気や障害などで文字が書けない人にとっては、遺言書を作成することが困難な場合がある。
  2. 全文、日付、氏名を自書しなければならず、内容によっては労力を要する。※財産目録については手書きで作成する必要がありません。パソコンでの作成や登記事項証明書、通帳のコピーでも構いません。ただし、財産目録の各ページに署名押印をする必要があります。
  3. 遺言者自身で民法の規定の方式に従って作成する必要があり、その方式が不適合な場合は無効となることがある。
  4. 内容が不明確なことが多く、相続人間でその解釈について紛議が生じたり、遺言執行が困難又は不能となることがある。
  5. 保管場所によっては、遺言者の死亡後に遺言書が発見されないままの場合がある。
  6. 変造、紛失、隠匿などの危険がある。
  7. 家庭裁判所の検認が必要である。※法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づく自筆証書遺言の保管制度を利用した遺言については、検認が不要となります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場の公証人に作成してもらう遺言書のことをいいます。

民法(抜粋)

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第3号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

メリット

  1. 病気や障害などで文字が書けなくても遺言書を作成できる。
  2. 方式の不適合による遺言無効のケースがほとんどない。
  3. 内容が不明確であることが原因で相続人間で解釈について争いが生じたり、遺言執行が困難又は不能となるケースがあまりない。
  4. 日本公証人連合会に遺言検索システムがある。
  5. 変造、紛失、隠匿などの危険がない。
  6. 家庭裁判所の検認が不要である。

デメリット

  1. 公証役場に予約をするなど事前調整が必要である。
  2. 公証人の手数料及び証人に対する日当などが必要である。
  3. 2名の証人が必要となるため、遺言書の内容及び存在を秘密にしておくことができない。

遺言でできること

ここに掲載している行為以外は遺言書に記載したとしても法的効果は生じません。

遺言でのみできる行為は遺言書に記載すべきですし、生前行為として実現できる行為であっても認知などは実際にはなかなかできないことですので、遺言によって実現させるのも一つの考え方かもしれません。

遺言によらなければできないこと

以下は、生前行為ではできず、遺言書に記載することによってのみ実現できる行為です。

  • 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない(民法第839条第1項)。
  • 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる(民法第849条)。
  • 共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる(民法第902条)。
  • 遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる(民法第908条)。
  • 共同相続人間の担保責任の別段の意思の表示(民法第914条)。
  • 包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分【遺贈】することができる(民法第964条)。
  • 1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる(民法第1006条第1項)。
  • 遺留分侵害額の負担に関する別段の意思の表示(民法第1417条第1項第3号ただし書)。

生前行為でも遺言でもできること

以下は、生前行為ですることがきますが、遺言によってもすることができる行為です。

  • 認知(民法第781条第1項・2項)。
  • 推定相続人の廃除(民法第892条・893条)
  • 推定相続人の廃除の取り消し(民法第894条第1項・2項)
  • 信託(信託法第3条第2号)
  • 一般財団法人設立(※)
  • 生命保険金の受取人の変更(保険法第44条第1項)
  • 系譜、祭具及び墳墓の所有権の承継者の指定(民法第897条)
  • 特別受益の持戻しの免除(民法第903条第3項)

※ 遺言による一般財団法人の設立について

(法務省ホームページ「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」より)
 遺言により一般財団法人を設立することはできますか。
 遺言によっても、一般財団法人を設立することが可能です。その場合、遺言で一般財団法人を設立する意思を表示し、定款に記載すべき内容を遺言で定め、遺言執行者が遺言の内容の実現(遺言の執行)を行います。遺言執行者は、遺言に基づいて遅滞なく定款を作成して公証人の認証を受け、財団法人成立までに必要な事務を行い、代表理事が、財団法人の設立登記の申請を行います。その際の手続の流れの概略は,次の1.から6.までのとおりです。

  1. 設立者が遺言で一般財団法人を設立する意思を表示し、定款に記載すべき内容を遺言で定める。
  2.  遺言執行者が遺言の内容の実現(遺言の執行)を行い、遺言に基づいて遅滞なく定款を作成して公証人の認証を受ける。
  3.  遺言執行者が財産(価額300万円以上)の拠出の履行を行う。
  4.  定款で設立時評議員、設立時理事、設立時監事(設立時会計監査人を置く場合は、この者も含みます。)を定めなかったときは、定款の定めに従い、これらの者の選任を行う。
  5.  設立時理事及び設立時監事が設立手続の調査を行う。
  6.  設立時理事が法人を代表すべき者(設立時代表理事)を選定し、設立時代表理事が法定の期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立の登記の申請を行う。

遺言書は作り直すことができるのですか?

遺言の撤回

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法第1022条)。例えば、公正証書遺言を自筆証書遺言で、自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回・変更することができます。

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合も同様に、撤回したものとみなされます(民法第1023条)。

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、撤回したものとみなされます(民法第1024条)。

遺言書の作り直し

民法第1022条の規定により、遺言の撤回・変更は遺言によってする必要があります(遺言の撤回・変更は遺言書の作り直しによらなければならない、と言うこともできます。)。

遺言書を作成した後に推定相続人の構成が変わったり、財産が増減して遺言内容と一致しないこととなったりすることがあり、そのような場合には、むしろ積極的に作り直しをするべきです。

前の遺言書と現状が一致しない部分のみを作り直してもよいでしょうし、全部を作り直してもよいでしょう。

なお、遺言自由の原則により、推定相続人の構成が変わったり、財産の増減がなくても作り直すことができます。何度でも作り直すことができます。

また、前の遺言書をそのままに、新たな遺言事項に関する遺言書を別途作成することもできます。

遺言能力その他の遺言に関する事項

遺言能力等

取引行為とは異なり、15歳に達すれば、遺言をすることができるようになります(民法第961条)。

成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復した時に、医師2人以上の立会いがあれば、遺言をすることができます(民法第973条第1項)。

公正証書遺言の証人の欠格事由

公正証書遺言においては、証人2人以上の立会いが必要となりますが、この証人について、次の者は証人になることができません(民法第974条)

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

共同遺言の禁止

2人以上の者が、同一の証書で遺言することはできません(民法第975条)。

自筆証書遺言の訂正方法

(民法第969条第3項)

財産目録を含む自筆証書遺言の加除その他変更は、

  1. 遺言者自身が、
  2. 欄外などに変更した箇所を示し、
  3. どのように変更したかを付記した上で、
  4. 署名し、
  5. 実際に変更した箇所に印を押さなければなりません。

自筆証書遺言の方式の適合性(主なもの)

  • 作成年月日のない遺言書は無効です(大決大正5年6月1日)。
  • 日付が「令和○年○月吉日」と記載されている場合は無効です(最判昭和54年5月31日)。
  • 印章に代えて拇指その他指頭に墨や朱肉などをつけて押印することでも足りると解されています(最判平成元年2月16日)。→実印で押印し、印鑑証明書を添付しておいた方が確実です。
  • いわゆる花押を書くことは、印章による押印と同視されません(最判平成28年6月3日)。
  • 遺言書の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものであっても、自署の要件に欠けることはありません(最判平成5年10月19日)。
  • 封筒に入れることや封印することは要件ではありません。→封筒に入れて封印した方がよいと考えられます。
  • 押印は認印で構いません。→実印で押印し、印鑑証明書を添付しておいた方が確実です。
  • 鉛筆や消せるボールペンは使用しないでください。

遺言の効力の発生時期

遺言は、遺言した人が死亡した時から効力を生じます(民法第985条第1項)。ただし、遺言に停止条件を付した場合で、その条件が死亡後に成就したときは、条件が成就した時からその効力を生じます(民法第985条第2項)。

当事務所の遺言関係業務

公正証書遺言作成支援
相続・遺言がメイン業務の福岡県久留米市の司法書士事務所です。ご相談から業務の完了まで事務所にご足労いただくことはございません。お気軽にお問い合わせください!
法務局における遺言書の保管(自筆証書遺言保管制度)
当事務所では、遺言書の保管申請書等の作成を業務として行っております。自筆証書遺言のことも併せてご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
遺言書の検認
遺言書と相続手続がメイン業務の福岡県久留米市の司法書士事務所です。家庭裁判所への自筆証書遺言の「検認」の申立てに関する業務を行っております。相続登記や遺言執行者の補助業務と一緒にご依頼をいただいた場合、無駄のない料金設定となっております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
遺言執行者を補助する業務
相続がメイン業務の福岡県久留米市の司法書士事務所です。遺言執行は専門的知識がないとなかなか難しいものです。遺言執行のことでお困りでしたら、是非ご相談ください。士業の方で遺言執行者に指定された先生からの遺贈の登記のご依頼もお持ちしております。なお、当事務所の司法書士は、一般社団法人日本財産管理協会の認定会員です。
遺贈の登記(不動産の名義変更)
相続・遺言をメイン業務としている福岡県久留米市の司法書士事務所です。受遺者や遺言執行者に指定された相続人の方、弁護士や税理士、行政書士の先生から遺贈による所有権移転登記(不動産の名義変更)のご依頼をお待ちしております。

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